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スカート引っ掴んで 上 (龍劉さまからの頂き物)


「…本当に身に着けなければならないのだろうか」

視線を外しながらピンクの布を恐る恐ると指先で持ってみる。
カーテンの包まれた狭い場所で、ライは保護者命令によってミレイに預けられた制服に着替え中だった。
だが一行に元より身につけている制服から着替える勇気が沸いてこない。
ミレイに指を突きつけられて命じられた内容は『ライ限定男女限定祭り!』。
つまりは着替え予定の隅に置いてある服は女性のものである。

「どうしてこんな目に…ルルーシュの方が似合うに決まってる」

「ライー、ちゃんと着替えてる?」

「いや、まだ…だ…」

生徒会室でミレイと二人きりとなった事が悪かったのか、
噂の男女逆転祭りを行った時にライだけが居なかった為に限定だと満面の笑みで告げられた。
ミレイの喜ぶ様を見るのは悪い気はしないけれど、性別を偽って遊ぶ行為にはどうしても納得がいかない。
それでもって自分に似合う筈がない!いや、似合う似合わない関係なく女装する時点でもの凄く恥ずかしい!
白肌の頬がみるみると朱に染まっていき、カーテンごしからのミレイの声に、ライは屈辱に耐えながら拳を握った。

<母上、お許しくださいっ。ミレイさんには逆らえないんだ!>

どうか今この時だけは、天から見守ってくれませんように。
胸に掌を当てて祈りながら、意を決して布を両手で広げてみる。
柔らかい肌触りでピンク色の可愛らしいレース付きの下着。

「くっ」

睨みつける白藍の瞳が段々とその光を揺らがせ、我慢できずに再び伏せられた。
するとカーテンが了解も得ずに開けられてしまい、目の前には腰に手をあてて吐息を零すミレイの姿が現れる。

「やっぱり着替えてない!仕方ないわねー」

呆れ声とは違って彼女の瞳は何故か輝いて見えるのは見間違いではないだろう。
悪い予感に後ずさるライの肩が掴まれ、制服のボタンを一つ外された。

「ミレイさん、やはりこれは・・」

「大丈夫よ、ちゃーんと可愛くしてあげるから」

「い、いや!そんな求めていない事をされてもっ」

「ちゃんと大人しくしなさい!」

語尾にハートが付いたかのような嬉々とした声に、ライは双肩を落として断念する。
とにかく裸を見られるのは勘弁してもらいたいので、早々とミレイには退出を申し出た。
着方分かるのかと疑いの視線を受けながらも、無理やりに背中を押してカーテンを閉める。

「さて……やるしかない」

多大な溜息を吐きながらも、脱がされかけた制服をおもいきって脱ぎ始める。
カーテンに包まれた狭い場所でのライの目の前、どこから持ってきたのか疑問に思う程の立派な等身大の鏡。
そこに映るのは女子制服を手にしたライの姿であり、羞恥を晒しているようで鏡から逃れるように身体の向きを変えた。





下着には梃子摺ったが、なんとか身なりを整える事が出来た。
にしてもこの胸の膨らみはやりすぎだと思う、ミレイぐらいの大きさだ。
例え偽物であり、一応自分の胸であるけれど直視出来ない恥かしさに吐息を零す。
そして意を決したライは恐る恐るとカーテンを開けた。

「あら!十分に可愛いじゃない!そのままでオッケーかも」

「……そのままって、他に何するつもりですか」

「それはもう、これよ!」

目の前に出されたのは、ライの月白と同色のウィッグだった。
逃げ腰なライを引っ掴み、無理矢理に頭を固定して装着させる。
そして鏡の前に椅子を設置してライを座らせ、少々乱れている髪に優しく触れて櫛で梳く。
決して見るものかと強く瞳を閉じているライと違い、ミレイは腰まで流れる月白を満足そうに眺めた。

「ほーら、ちゃんと見てみなさいよ。可愛いわよー」

「どこが・・っ」

完成された着せ替え人形にミレイの満足そうな良い笑みが鏡に映っていた。
そしてライは目の前に今まで見たこともない異性…自分では絶対に思いたく無いと言うのにそう思わざるえない感想を心の内で呟いた。

「ありえない」

「何がありえないのよ!これでルルーシュなんか楽勝ね!」

「……は?」

耳を疑いたくなる発言を聞いた気がする、ルルーシュが何だと言うのだろう。
まさか…まさか、まさか?!
予感が頂点に達して、湯気が出そうな程に顔の温度が高くなった。

「この姿をルルーシュに見せるつもりですか?!」

「当たり前よ、誰にも見せないなんて勿体無いじゃない」

「ミレイさんに見せているでしょう!」

「私は例外。はい、次の任務を言い渡します」

保護者命令に背けないライは、任務と言われれば逃げる事叶わない。
恥じらいに耐える為に自然と腕を組むと同時に足を開こうとしてしまい、はたと気づいて急ぎスカートの丈を引っ掴む。
ちゃんと女らしくしなさいと頭上から面白げに注意され、穴があれば入ってしまいたいと嘆きたくなった。

to be continued
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