※これは、ライがコードを持っている、すなわち不老不死であることを前提としたお話です。
色々とありえん設定ですがそこは見逃してやってください。
ライのコードは左肩にありますよ
ライはコードを持っているのにギアスが使えるという不思議な状況
それからルルーシュがギアスを持ってることも知ってる。
ああ今日も赤い鳥が羽ばたいている。
うるさいぐらいの泣き声と、まるで血のような赤をした鳥。
お前はどうして、僕のもとにきたんだい?
暇を持て余していた僕の右手は、そっと鳥を撫でた。
「ライ、何をやっているんだ?」
「っ!!」
突然の来訪者に僕は驚き、すばやく身を引く。
これを見られないようにしなくては。
この鳥をみられてしまっては、僕はここから逃げなくてはならなくなる。
「そんなに驚かなくてもいいだろう?どうした?左肩を庇うようにして」
「ぁ…」
きっと本当に無意識レベルのことだったんだろう。
それでも僕は左肩を庇ってしまった。
気付かれる…!!どうしよう、殺すか?でも、僕にそれができるだろうか?
いやだめだ。C.C.は殺せない!どうする、どうする…!!
「なんだ?ピザでも隠しているのか?」
「ち、ちがう。何もないさ。別に、何も」
つむぎだされた言葉はあまりに滑稽で、面白かったものだろう。
こんなにも言葉がつかえたのは、久しぶりだ。
「慌てるな。別にとって食いはしない」
「そうか…」
少しばかり安心し、ふぅと溜め息をつく。
そういえばC.C.はギアスについて詳しいがどうしてそんなにもくわしいのだろうか?
心の中で警戒心よりも好奇心が勝った。
「C.C.、君はどうしてあんなにもギアスに詳しいの?」
「ああそれはな…私は契約者だからだ」
「けい、やくしゃ…?!」
C.C.からすれば言葉遊びに聞こえるだろう、と思っていたのかもしれない。
でもその言葉の意味が僕には理解できてしまった。
僕のこの鳥だって昔の契約者に押し付けられたモノだ。
そうか、C.C.は…。C.C.も…。
「死にたいのか?君は」
「?!」
ひとこと、彼女になげかけてみる。
すると彼女の表情がくずれ、哀しげな表情になった。
「不老不死という永遠の地獄から、抜け出したいのか?」
「どう、して?」
「僕も、同じだからさ」
「同じ?それは、どういう意味だ」
なおも言葉を続け、確信へと近付いていく。
ここまでくればあとは見せるだけだ。
この左肩にいる、呪われた赤い鳥を。
「これを見て、C.C.」
「それは…コード?」
「コード、というのかこれは。もっと鳥っぽい名前かと思ってた」
「そんなことよりなぜお前がそれを持っている」
「僕のギアスが暴走したときに、この鳥を押し付けられたからさ」
ずっと、僕にギアスを与えた人間を味方だと信じて疑わなかった。
でもそいつは裏切った。いとも簡単に、あっさりと。
「ではなぜ、ギアスを使える」
「普通は使えないんだっけ…。でも僕にも分からない。
契約する側になったはずの僕が、どうしてギアスを使えるんだろうね?」
自嘲気味に話せば彼女の表情はさらに哀しげな色に染まる。
きっと彼女は僕以上の長い、長い時間を歩き続けていたのだろう。
死のうとすれば鳥が鳴き、お前は死ねないんだと呼びかける。
「お前は、契約者をつくらないのか」
「つくらないよ」
「死にたくないは、ないのか?」
「死にたいさ。今この瞬間だって死にたいと思ってるよ。でも…」
でも?
C.C.は無言だ。でも、真剣な目で問いかけてくる。
「でも、僕がこの鳥を誰かに押し付ければ、その誰かが苦しむ事になる。
そして鳥を手にし、契約する側になったその誰かがさらに誰かに鳥を押し付けるかもしれない。
地獄の螺旋は運命の鎖となってずっと、誰かを苦しめつづける。
ならば、僕がその鎖を断ち切ろうと思ったんだ。僕がこれをもち続ければ、そこで螺旋はとまる」
「自分を犠牲にしてでも他人のことを考えるなんて、お前らしいな」
「そう、かな?」
苦笑にも似た微笑をうかべると、C.C.はふらりと立ち上がった。
美しい草原の色の髪がゆれる。
つられて僕も立ち上がり、彼女と一言、言葉を交わした。
「ルルーシュに赤い鳥をおしつけるつもりなの?」
「どうしてルルーシュが契約者だとわかったんだ?」
「それはなんとなく。で、どうするつもり?」
「…まだわからないんだ、自分でも」
「そっか。じっくり考えるといいよ。君の気持ちを」
じゃあ、と手を顔の横に持ってきて、僕はその場を後にした。
振り返ることはしなかった。
わからないけど、C.C.がこちらを向かないで欲しいと思っているんじゃないかって感じたからだ。
暫く歩いたところで、立ち止まる。
僕の右手は、また左肩の赤い鳥をなでていた。
羽ばたき
(鎖は、僕が全部背負うから。)(バサリ、鳥が羽ばたいた)
PR