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硬く閉ざされた壁の隙間から、少しずつ記憶が漏れてくる。
そしてそのうち隙間は大きな穴となり
いつのまにか壁はなくなり、記憶は全て戻っていた。
「どうしたの?顔色が悪いけど…」
「な、んでもないよ」
精一杯の笑顔。あふれそうな涙。
まだ泣いちゃだめだ。
せめて、学園祭が終るまでは、ここにいたい。
みんなと楽しみたい。
力はまだ、あのときのように暴走していない。
あと、もう少しだけ。
「ああいけない。もうこんな時間だ。
少しだけど楽しかったよ、ありがとう」
「こっちも楽しかったよ!
続きの仕事、頑張ってね!」
逃げるように体育館を出て、僕は持ち場へと駆け足で戻る。
前のように「委員長!」と声をかけてくれる人が何人もいて、嬉しかった。
もうすぐ、お別れなのに。
「実行委員長、あとでうちの模擬店見にきてくださいね!」
「もちろん行くよ」
「あ、ライ委員長!お疲れ様です!」
「そっちも、お疲れ様」
互いに笑顔と返事を交わす。
そのたびに僕は泣きそうになった。
ここはなんて暖かい場所なんだろう。
どこの馬の骨とも分からない僕に、ここに居て良いと言ってくれた。
記憶喪失の僕に、新しい幸せな記憶をつくってくれた。
色を失くしてしまった僕に、たくさんの鮮やかな色を与えてくれた。
嗚呼、ここはなんてやさしい世界なんだろう。
でも、もう行かなくては。
僕は飛んでいかなくてはいけない。
飛びかたを思い出してしまったから。
もう、飛ばない小鳥ではいられない。
大好きなみんな、さようなら。
出来るならば、僕が居なくなっても笑っていてね。
飛んでいく小鳥
(飛ぶことがこんなにも苦しいだなんて知らなかった)
(こんなにも苦しいなら、飛びかたなんて思い出さなければよかった)
(いっそのこと、この翼をもいで飛べなくしてくれればいいのに)
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