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「スザク。僕はまだ、君しか信じられないんだ」
「そっか…。でも最初はそれでいいと思うんだ。少しずつでいいから。ね?」
「っ、でも!」
「不安かい?なら、僕が君を守る騎士になるよ。僕が君を、守るから」
それから僕らは、いわゆる恋人同士になった。
幸せだった。幸せだったから、その幸せを壊させないために僕は黒の騎士団へ入った。
守りたかった。僕とスザクの大切な時間を。
でも、スザクは僕の敵だった。
スザクは白カブトのパイロットだった。
嘘だと思いたかった。
でも、思えなかった。
だってスザクが、あまりにも真剣な目をしていたから。
「おはよう、スザク」
「あ!おはようライ!!」
屈託のない笑顔で僕と挨拶をするスザク。
いつもと変わらない日常のはずなのに、僕の中で何かが壊れていく。
ああ、やめて。僕の幸せを奪わないで。
僕の愛する人を、奪わないで。
気が付けばスザクの顔が目の前にあった。
いつものように軽いキスをされるんだ。
そう考える前に、僕は彼の胸を押していた。
「…ラ、イ?」
「ご、ごめっ…スザク、ごめん。ごめん!スザ、ク!ごめっ…す、ざく」
スザクは混乱しているようだったけれど、きっと僕の方が混乱してた。
どうしてこんなことしてるんだ、僕は。
いつものようにキスすればいいじゃないか。
どうして、どうしてどうしてどうして…!!
一度流れ出した涙は、止まってくれない。
僕はどうしていいか分からず、もう一度だけごめんといって走りさった。
それから黒の騎士団のアジトへ行って、ゼロにあって、またごめんなさいと呟いて、寝ていろと言われた。
今の僕が指揮をとれば確実に足手まといになるだろうから、僕はゼロの言葉に甘えた。
かれは手袋をはめた手で、そっと涙をぬぐってくれた。
でもその仕草が、優しさが、まるでスザクの様でなおも瞳から雫が零れていた。
それから数日後、スザクの騎士叙勲式が行われた。
それを僕はテレビで呆然と見ていた。
スザクを騎士に選んだのはユーフェミア。
そしてスザクもそれを受けいれた。
スザク。君は僕の騎士でいてくれるといったのに、どうして?
僕はクラブハウスにいた。
叙勲式をみたあと、スザクに裏切られた気分になって学校を早退した。
あまりの衝撃に僕は泣くことすらできなかった。
外は酷い雨だ。叙勲式の日にはふさわしくない雨音。
コンコン、とドアをノックする音がした。
返事をすると、入ってきたのはルルーシュだった。
ルルーシュは、非常にきまずそうな顔をしている。
「どうか、したのか?」
「…スザクがきてる」
スザクという単語に僕は過剰反応し、怯える。
裏切り者で、敵で、愛する人。
僕は逃げ出したくなった。でも逃げ出せなかった。
ルルーシュの後ろに、スザクがいたからだ。
「ライ!」
「…ス、ザク」
「ライ。僕、ユーフェミア様の騎士になったんだ」
「知ってるよ。さっき、テレビで見てた」
「本当は一番最初に君に伝えたかったんだけどね…」
彼は嬉しそうに話を続ける。
ユーフェミアと出会ったときの話、ユーフェミアが皇族だと知ったときの話、他にも色々。
それはぜんぶ、ユーフェミアの話だった。
やめて。やめてよ。君が愛してるのは僕だろう?
なのにどうして、そんなに嬉しそうに他人の名前を呼ぶんだ。
「もう、やめろよ…!」
そういったのはルルーシュだった。
今にも泣き出しそうな、苦しげな顔をしている。
「ルルーシュ?どうしたの?」
「わからないのかスザク!お前は…お前はっ!!」
ああそうか。ルルーシュは全部わかってるんだ。
僕が思ってることも、考えてる事も、全部分かってしまったんだ。
何も分かっていないスザクと、全て分かってしまったルルーシュ。
優しすぎる二人の愛が痛くて、僕は外へ飛び出した。
打ち付ける雨が逆に心地よかった。
いっそその雨が弾丸となり、僕を撃ち殺してくれればいいのに。
君の愛で、僕を殺して。
(こんなにも愛してるのに、君は僕のことを何一つとして分かってくれない)
(こんなにも、あいしてるのに。)
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