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つくりもの (ライ独白:記憶は戻ってる)


「あ、あの、好きです!!付き合ってください!!」

と、このあいだ告白された。
もちろん僕は断ったが、彼女は僕のどこを好きになったんだろう。
僕は、全部つくりものなのに。
この時代の常識や生活に必要な術、KMFについての情報や操作方法などの莫大な知識も
神経や骨格、筋組織、つまり体さえも自分のものじゃない。

本当の僕は傲慢で稚拙な、独りよがりな王なのだ。
本当の世界を知らず、大切な人を守れず、逃げることしかせず。
そんな僕を誰が愛してくれようか。
そんな私を誰が愛してくれようか。
そんな己を、僕が私が愛してくれようか。

過去の私は幸せだった。
どれだけの人を殺めようと、どれだけこの手を穢そうと、母と妹がいてくれたから。
記憶の無い僕は幸せだった。
罪を忘れて、己はつくりものだという記憶も失くし、優しい人達の傍にいれたから。

今の僕は、不幸だった。
過去の罪と、王の力のありさまと、つくりものの自分を知ってしまったから。


あんなにも記憶が戻ってほしいと願っていたのに、戻ってしまえばこのありさま。
ぜんぶぜんぶつくりものの自分が、悔しくて寂しくてたまらない。
幸せだったのに。幸せのままでいたかったのに。
僕はもう、幸せにはなれない。


いっそのこと、過去も記憶も、全て捨ててしまえたら。


(そしたらまた、幸せになれるかな?)
(いや、なれるわけがない。だってそうしたら、また記憶が戻った時に、今より辛くなるのは自分だもの)
(それでも、それでも捨ててしまえたら、なんて)
(どこまで傲慢で稚拙なんだろうね、僕は)








全て捨てられるなら、それはとても楽だろうけど
それを取り戻した時にまた辛い思いをするのは自分ですよね。というはなし。

…一番最初の台詞いらなかったかもしれない。
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