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ああどうしよう!
この書類は今日の午前中には提出しなきゃいけないのに。
こっちの書類もはやく目を通さなきゃ。
ああどうしよう!
やることが、たくさんありすぎる。
授業終了のチャイムと同時に僕は教室を出た。
大量の書類を抱えて全速力で走る僕の姿はそうとう格好悪いだろう。
でもいまはそんなこと気にしていられない。
とにかくはやく生徒会室へいって、はやく作業をすすめなくては。
「実行委員長!」
廊下を走っていると女の子の声がした。僕のことを呼んでいるようだ。
ぴたっと止まって彼女の方を向くと彼女は顔を赤くしていた。
風邪でもひいたのだろうか。
「あ、あの、これ、作ったので良かったらどうぞ…!!」
おずおずと差し出されたのは可愛くラッピングされたクッキーだった。
市販のものよりも若干形が歪んでいるそれは愛情がとても感じられる。
「ありがとう。ありがたくいただくことにするよ」
嬉しくてつい笑うと、彼女はさらに顔を赤くしていた。
後ろでは「キャーッ!」という黄色い声が聞こえた気がする。
「実行委員長!私のももらってください!」
「わたしのも!」
「これもどうぞ!!」
彼女のを受け取った瞬間、他の人も色んなものをくれて、腕の中からこぼれ落ちてしまいそうだった。
書類も持っているので、もういっぱいいっぱいだ。
でも、全然嫌な気はしなかった。むしろとても嬉しかった。
自分は、ここにいることが許されてるんだ。
「委員長!頑張ってくださいね!!」
「学園祭たのしみにしてますからっ!!」
みんなにお礼を言って生徒会室に向かおうとすると、沢山の応援の言葉をもらった。
嬉しすぎて、涙がでそうだった。
僕は返事の変わりに心から笑って、また駆け出した。
「ライ」
「ああ、ミレイさん」
生徒会室で書類に目を通していると、ミレイさんに声をかけられた。
ミレイさんはいつも以上にニコニコしていて、とても嬉しそうだった。
「実行委員長っぷりが板についてきたじゃない!
その調子でこれからも頑張ってね!」
「はい。もちろんです」
少しだけ胸を張って言うと、彼女は満足そうに微笑んだ。
「最近、よく笑うようになったわね。学校、楽しい?」
「はい。とっても。」
「そう、良かった!はやく記憶が戻るといいわね」
「記憶が戻るといいわね」という言葉に僕は「はい」といえなかった。
あいまいに微笑んで、無理やり別の話題に変えた。
いつから僕は、記憶が戻る事を第一に望まなくなったんだろう。
いつから僕は、ずっとここにいたいと思うようになったんだろう。
この複雑な感情に、僕は少しだけ胸を痛めた。
飛べない小鳥
(飛べないんじゃなく、飛ばないだけなのかもしれない)
(ここがあまりにも、やさしすぎるから)
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